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詩 『 飛ぶ少年 』

       貧しい家だが
       家族の愛情に育まれる少年
       その少年は
       飛ぶことが天性だと信じて疑わなかった
       
       母親が夜毎読み聞かせる
       サン=テグジュペリの「星の王子さま」に
       少年は次第に空想を膨らませ
       飛行士になりたいという
       思いを抱くようにまでなっていた
       
       少年は小鳥のように
       パタパタと羽ばたく真似をしてみたり
       風待ちの丘の上に登ると
       両腕をいっぱいに広げ
       風を全身で受け止めようとした
       一生懸命勉強をして
       飛行士になろうともした
       
       今では
       空を飛ぶ手段はたくさんあるけれど
       少年の生まれ育った頃には
       空を飛ぶことは
       そう容易いなことではなかった
       
       少年は
       空を飛びたかった
       でも少年には
       空を飛ぶことは出来なかった
       空を飛ぶための
       羽も お金も
       少年は持っていなかったから
       
       自らの天性を見失った少年は
       風待ちの丘に登ると
       空目掛けて大きく羽ばたいた
       少年は海へ真逆さまに落ちていき
       海の底深くへ沈んでいった
       
       次第に冷たくなっていく海水の
       心地良い感覚に目を開けると
       色鮮やかな魚の群れが
       流れるように目の前を泳いでいた
       少年は魚の群れについて行こうと
       両腕を小鳥のように羽ばたかせた
       
       空を飛ぶことを夢にみていた少年は
       海の大空を小鳥のように飛んでいた
by dreaming_star | 2004-04-27 22:57 |
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