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詩 『 きみによく似たひと 』

       鳥居の脇にあるベンチ
       きみはよくそこにいた
       昼間の太陽はまだ眩しかった頃
       きみのからだをすっぽり包み込む
       朽ちかけた木製のベンチの下で
       きみはぼくを待っていた
       あの日からずいぶんと経ち
       もうベンチの下に
       きみの姿を見ることはない
       踏みつけてしまいそうになりながら
       駆け上った石段にも
       石段脇に並ぶ灯篭の影にも
       きみの姿を見つけられない
       ぼくは視点の定まらない視線を
       泳がせることもなくなった




詩 『 きみによく似たひと 』_a0001563_21455458.jpg

       その帰り道
       きみに遇った
       きみがいたあの場所から
       ずいぶんと離れた場所だった
       ぼくは自転車を飛び降り、投げ出して
       吸い寄せられるように駆け出していた
       近づくごとに
       ぼくの足は速度を緩めていた
       きみではなかった
       落胆しながらも
       ぼくは歩を止めず
       きみによく似たひとに近づいて行った
       「ねぇ」
       そう声をかけると
       きみによく似たひとは
       恐れて逃げようともせず
       茶色い瞳でぼくを見上げた
       ぼくは跪き
       背をそっと撫でると
       気持ちよさそうな顔をして
       膝の上に乗っかってきた
       きみもよく膝に乗っかって
       きみの長いふさふさの毛をほぐしながら
       つやつやになるまで撫でていたな
       そんなことを考えながら
       ぼくはきみによく似たひとを撫でた
       
       きみに会うことはもうないけれど
       きみによく似たひとに遇うことはまたある
       その度に、ぼくは瞼に収めたアルバムを捲り
       きみの柔らかな毛の感触とぬくもりを思い出す

       小さな頃のモコちゃん
詩集 きみによく似たひと 写真 道で見かけたペルシャねこさん
by dreaming_star | 2004-12-12 21:46 |
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