カテゴリ:詩( 266 )
詩 『 待ち合わせの時間 』

       高く積まれた書類の中
       毎日ぼくは雑用に追われている
       ふと気付くと
       その日も定時を過ぎていた
       鳴ったはずのチャイムにも気付かず
       ゆうに二、三時間も過ぎていた
       ブラインドに閉ざされた窓に射す光もなく
       切れた暖房の送風口らは
       冷たい風が吹き始めていた
       時計を見ると21時を回っている
       カレンダーの赤い丸印
       もう一度時計に目をやる
       きみとの約束の日
       待ち合わせの時間
       ようやく
       ぼくは遅れたことに気付く
       
       「ごめん、遅くなってごめん」
       ぼくがそう謝ると
       ふっと笑って
       「わたしもちょうど今来たところなの、
        遅くれたのはお互い様。
        だからね、
        あなたは謝ることなんかないのよ。」
       きみはそう言ってぼくを慰めてくれた
       
       手を握ると
       手袋をしてないきみの手は
       氷のように冷たかった
       抱きしめると
       コートの上からも
       きみの身体が寒さで震えていた
       確かめるように
       見つめた瞳
       ぼくの顔にかかる
       きみの息は冷たかった
       
       待ち合わせの時間よりも
       ずいぶん早くにここに来て
       ひとり寂しく待っている
       きみの姿が目に浮かぶ
       
       「ごめん、遅くなってごめん」
       ぼくはきみを抱きしめる手に力を込め
       繰り返しそう言った

詩集 待ち合わせの時間
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by dreaming_star | 2004-12-26 21:09 |
詩 『 クリスマス 』

       サンタクロースじゃないぼくが
       サンタクロースになれる夜
       天使のように眠るきみに贈るのは
       メリークリスマスと愛の口づけ
詩集 クリスマス
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by dreaming_star | 2004-12-25 00:30 |
詩 『 あの日の雪 』

       大雪の降ったあの日のことを
       ぼくは今でも鮮明に
       思い出すことが出来る
       
       朝目覚めると
       窓から差し込む日差しが
       妙に眩しかった
       小鳥の囀りが全く聞こえず
       妙にシーンと静まり返っていた
       
       この世に音など存在しないかのように
       この世の音という音を
       吸収してしまったかのように
       
       全ての音が無くなり
       そこに存在するのは
       ただ静まり返った
       寒々とした空気だけであった
       
       この閑散とした雰囲気に
       包まれながら
       今までに無い空気の中に
       何か安閑としたものを感じた
       まだ見ぬ外観に
       安楽を感じ取ってしまった
       
       窓を開けた途端
       眩いばかりに
       あたり一面
       白銀の世界
       
       山積の如く軒下に
       積み上げられた雪
       山陰にひっそりと佇む雪の城
       
       
       
       ただひっそりと
       そこに佇む白い雪に
       辺り一面の白銀に
       
       時を忘れ、嘆声も忘れ
       幼心に“完璧な美”を
       鑑賞した気がした
       
       眩いばかりの朝日を浴びて
       光り輝く雪の結晶
       軒先に連なる半透明なつらら
       枝先に降り積もる
       満開の雪の花
       
       ゆき、ゆき、ゆき
       奇声をあげて
       部屋を飛び出したい
       
       弾む心とは裏腹に
       ひっそり、静かに
       この美を鑑賞する
       
       ただひっそりと静まり返る
       雪の声に耳を傾ける
       
       囁く
       微かにささやく雪たち
       降り積もる
       積素のように滑らかな
       雪たちの声
       
       耳を澄ませば
       雪のささやきが聞こえてくる
詩集 あの日の雪
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by dreaming_star | 2004-12-23 22:38 |
詩 『 頑張り過ぎない 』

       どう足掻いたって
       ぼくは世界を変えられない
       
       そんなぼくを変えたのは
       きみの一言だった
       
       「頑張り過ぎないことも
        ひとつの生き方かも知れない」
       
       その一言で
       少し違う
       世界が
       見えてきた
詩集 頑張り過ぎない
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by dreaming_star | 2004-12-22 23:07 |
詩 『 一日の始まり 』

       寒い朝
       遠く望む山並み
       藍色の空の上
       臙脂色、躑躅色が
       彩リ始める
       
       隣家の屋根には
       うっすらと霜が降り
       町工場のサイレンが
       ウォーン
       一声大きく唸る
       
       煙突は
       白い息を吐き
       今日の
       一日が始まる
       
       ぼくは窓を開け
       昨日のくぐもった空気を
       空に逃がし
       冷風と
       昇ったばかりの
       朝を迎え入れる
詩集 一日の始まり
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by dreaming_star | 2004-12-21 22:30 |
詩 『 きつねの嫁入り 』

       やけに暗い朝だった
       東の空に太陽が昇り
       白々と夜が明ける頃になっても
       太陽はどんよりとした
       灰色の雲に覆われ
       霞のかかる山並みも
       遠く、遠くに感じられる
       暗い朝のことだった
       
       突然、雨が降リ出した
       ざんざん、ざんざんと
       雨は降っているのに
       次第に空は晴れてゆき
       日が照り出しても
       雨は降り続けていた
       
       ぼくは駆け出す
       いつもより少し躊躇いがちに
       きつね火に騙されたように
       雨にその身を委ねるように
       
       空っ風が舞い
       きつね火を見る
       ぼくはきつねに抓まれた
       白粉をつけた花嫁を見る
       小雨の中に
詩集 きつねの嫁入り
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by dreaming_star | 2004-12-20 23:07 |
詩 『 トパーズ 』

       どどどーっ
       息弾ませて駆けてくるなり
       ふんっ
       きみは右手を差し出す
       小さな手のひらには
       くすんだ黄色の
       岩石のような石が
       乗せられている
       なんだよ、これ
       そう言いたげな顔をしていると
       「とぱーず、さっき川原で見つけた」
       きみは
       ふんぞり返りそうなくらい胸を張って
       そう言った
       
       ちょうど一ヶ月前
       ぼくはトパーズの話をした
       
            きみはトパーズって知ってるかい?
            トパーズは鉱石
            高山から掘り出された
            有用な金属を含む岩石なんだ
            主産地は
            ブラジル、パキスタン、スリランカ
            色は無色透明で
            まれに黄、青、ピンクや緑の
            色彩を持ったものもある
            トパーズと言えば
            黄色ってイメージがあるけれど
            それは昔、
            日本では
            トパーズは黄玉とも言われ
            とても重宝されていたからなんだ
            トパーズは黄色ってイメージする人が多いのは
            その名残からなんだろうね
            トパーズの名前の由来は
            ペリドットの産地、紅海の島
            “トパーシオ”(ギリシャ語)や“トパゾン”
            という島の名前に由来すると言われている
            トパーズは11月の誕生石
            ぼくの生まれた月は11月だから
            ぼくの誕生石でもあるんだ
            トパーズをお守りとして身に付けると
            悲しみを払い、知性と勇気を強め
            金台に取り付け首にかけると
            呪いを払うと云われている
            トパーズはぼくの守護石なんだよ
            トパーズの宝石言葉は
            友情、希望、潔白
       
       そんなことを延々と話した
       そのことをきみは覚えていて
       きみの頭に思い描いたトパーズを
       きみは川原で見つけるなり
       一目散にぼくのもとに駆けてきて
       そのとぱーずをぼくにくれようとしている
       ぼくはきみのその気持ちがうれしくて
       きみの手渡してくれるとぱーずを手にし
       太陽にかざしてくるくると回す
       きみの澄んだ瞳に映る川原の石は
       トパーズ色に輝いていた
       「とってもきれいなトパーズだね」
詩集 トパーズ
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by dreaming_star | 2004-12-19 23:09 |
詩『 椅子のスカーフ 』

       西向きの部屋の窓際
       ひとつ置かれた椅子
       夕日の照らす頃
       あの人はいつも
       うたた寝をしていた
       ゆったりとした背もたれに
       小さな身体を預け
       子供のような寝顔をしていた
       
       その椅子に座る人もいなくなり
       いまでは
       背もたれのスカーフが
       その椅子でうたた寝をしている
       あの人のように
       長髪を靡かせて
詩集 椅子のスカーフ
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by dreaming_star | 2004-12-19 08:51 |
詩 『 まどろみのひととき 』

       眠りに落ちる前の
       まどろみのひととき
       そのときを楽しみなさい
       
       そのとき
       なにか思いついたとしても
       無理に目を開け
       起き出さなくてもいい
       
       大切なことなら
       消えてなくなりはしない
       目覚めて
       意識がはっきりするころには
       すっかり思い出しているだろうし
       思い出せないのなら
       大して重要なことではなかったのだ
       
       眠りに落ちる前の
       ひとときを楽しみなさい
       まどろみの光に導かれるまま
       夢の野原に駈けて行きなさい
       
詩集 まどろみのひととき
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by dreaming_star | 2004-12-17 06:17 |
詩 『 庭の大亀 』

       ぼくのうちにある庭
       ぼくはこの庭でずっと遊んできた
       
       庭の中央にある
       岩石を横たわおらせる一本橋
       その両脇を囲む
       砂利を敷き詰めた池
       枯山水を思わせるその池には
       大亀の形をした石がある
       
       幼い記憶が蘇る
       寒風の吹く
       まだ暑い夕日の輝く頃
       庭木に水やりをすると
       庭木がふっと笑い
       落葉樹が葉を舞わせ
       大亀は
       池の中に潜ろうとしていた
       
       ぼくは
       大亀の背に飛び乗った
       竜宮城に行こうとした
       あのとき
       ぼくは本当に
       竜宮城に行けると信じていた
       
       あの日のことが懐かしく思える
       今日も庭の落葉樹が
       彩りを増した葉を風に舞わせている
       大亀も楔色の苔を生やしながらも
       砂利道の池を泳ぎ回っている
      詩集 庭の大亀
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by dreaming_star | 2004-12-16 22:42 |