詩 『 さくら缶 』
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       僕が働いている缶詰工場では
       蟹缶とか鮪缶とか作っているんだけれど
       この蟹や鮪の水揚げ量がめっきり減ってね
       営業利益がさっぱりで
       株主総会も大荒れだったとか
       最近では
       人事がリストラなんか始めてるって
       うわさまで出始めているんだ
       
       だからね
       僕は人事異動を希望したのさ
       それは企画課
       僕には不釣合いな所だけれど
       そこしか空きがなかったから
       希望したんだけれど
       それがまぐれで通ってね
       企画課に配属になっちゃったんだよ
       
       配属になった日
       僕はおろおろしてどうすりゃいいか分からなかったから
       とりあえず企画書でも書くことにしたのさ
       
       企画案
       
        「春限定さくら缶」
        鼻の奧 擽る香りは さくら缶
        甘くてすっぱい春をあなたに
        
        こんなキャッチコピー付けてさ
        やっと企画書作ってね
        課長に提出したらさ
        企画検討会にまでかけられちゃってね
        まぐれでこの企画通っちゃったんだよ
        
        このさくら缶
        中には空気しか入ってないが
        開けた途端
        さくらの香りが溢れ出てくる
        日本各地の桜の名所の香りを集めてね
        ご当地版も作ってみたよ
        
        もうそろそろ試験缶が出来る頃じゃないかな
        市場に出回るのはまだ先だけれど
        もし君の近くのスーパーに
        さくら缶を見つけたら
        試しに買ってみてね
        振っても音はしないけれど
        花見に行かなくても
        酔っ払っちゃうほど
        さくらの香りがするよ
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by dreaming_star | 2004-03-13 23:26 | 詩の目次1-100
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