詩 『 エノコロ草 』
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    この前見かけたあいつが
    また来てるぞ
    あいつ ボクのことずっと見てるから
    ボクに興味があるんだろうな
    ボクも あいつのこと
    ちょっと気になるから
    近づいてみたいんだけど
    あいつ ボクよりずっと大きいから
    ちょっとこわいなぁ
    
    そんな顔をして
    岩陰からそーっと
    こちらの様子を窺っているきみ
    ぼくが
    「おいで」と言って
    手を差し出しても
    きみは怖がって
    すぐに遠くへ逃げ出してしまうだろう
    ぼくはきみを驚かせないように
    そーっと身体の向きを変え
    転んだ状態に近い格好で
    側に生えているエノコログサを摘む
    エノコログサの先端を
    フライフィッシングのルアーのように
    飛び跳ねたり
    泳がせたり
    地を這わせたり
    驚かせるような動作はせず
    子供の頃
    田んぼのカエルを釣ったときの
    あの感覚を思い出しながら
    きみの注意を引くように
    きみの興味をそそるように
    まるで生きものように
    エノコログサを操って見せる
    
    ぼくの操るエノコログサを
    きみは身を乗り出して見ている
    よーし その調子 その調子
    そう思いながらも
    ぼくは
    エノコログサを振る手を止めない
    そろーり そろーり
    きみは近づいてくる
    ぼくは
    エノコログサをイモ虫みたいに這わせる
    次の瞬間
    きみは小さな足を蹴んばると
    ぴょーんと跳ねて
    エノコログサに飛びついた
    ぼくは
    やったー と
    大声を出しそうになるのを必死に堪え
    きみにつかまえられたエノコログサを
    ふにふにと動かし
    きみの手から
    逃げ出すうさぎみたいに
    ピョンピョンと飛び跳ねさせる
    きみはエノコログサのうさぎを追いかけて
    右手で掴まえようとする
    ぼくはエノコログサを操りながら
    きみの頭を人差し指でちょんと突っつく
    でもきみは全然気付かない
    
    エノコログサに夢中になっているきみ
    そんなきみに触れた瞬間
    ぼくは
    エノコログサを追いかける
    きみのように
    きみに夢中になったのさ
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by dreaming_star | 2004-07-04 20:14 |
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