詩 『 もしも一つだけ 』

 「もしも一つだけ、願いが叶えられるとしたら」
 そう問われたら、僕は家族や友人、僕に携わる人々に感謝し、皆の幸福を願わなければならないのであろう。そして、あらゆる者の幸福を願い、救世主のように、世界平和とは何かを説くのだろう。僕は性善説を信じている。生れくる人は皆、聖者だと思っている。心に夢と希望を携え、その心を人に与えるために生き続けていくのだとも思っている。

 しかし、今の僕は聖者でもなければ、熱心な信仰心も持っていない。生を受けたときの願いと祈りの術も、成長するごとに俗世に慣れてしまって、今はもう、目にするもの、手に入れられるものしか信じることの出来ないただの人間となってしまった。今の僕が祈ることと言えば、物欲を満たすことが第一。欲しいものはありすぎて、一つに決めることなど出来はしない。まして、夢を見ることを忘れた人間になってしまった今、僕の祈りなど口にした途端、風に吹き消され、聞き届けられることなどあり得ないだろう。

 夜空には月が輝いている。その月は満月に近く、月明かりは妖艶な赤い光を放っている。光はまるで太陽のように眩しい光で、燃える炎のように強いエネルギーに満ち溢れている。

 「もし一つだけ、願いが叶えられるとしたら」
 再びそう問われたなら、月光に照らされた今、僕はこう唱えるだろう。ひとつだけ願いが叶えられるとしたら、オーロラが見たい。夜空に現れる色鮮やかな壮麗で、心を奪うほどの輝きを放つオーロラを一目でいいから。願うオーロラは、壮大な夜空に突如出現する不思議な光のカーテンを閃く天空に波のようにうねり、魅惑の輝きを放っているのだろう。僕の住む地には現れることはないであろうが、心にオーロラは出現するかも知れない。
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by dreaming_star | 2004-03-02 20:32 | 詩の目次1-100
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