詩 『 頑固爺さん 』

       近所にいる頑固爺さん
       いつも怖い顔しているから
       近寄る人は誰もいない
       怖いからぼくも近寄れない
       近所にいる頑固爺さん
       いつもの怖い顔をして
       野良猫に合いにやって来る
       恐れもせず野良猫はそこにいる
       「たまご食べるか、ほらっ。」
       頑固爺さんが
       ゆで卵を野良猫の足下へ放ると
       野良猫は
       クンクン と匂いを嗅ぐだけで
       またいつものしたり顔をする
       「食わんのか、お前。」
       頑固爺さんは
       さらに怖い顔をして
       右手を野良猫の頭上に振り上げる
       野良猫は
       そっぽを向いている
       「こらっ!」
       頑固爺さんは
       振り上げた手をさらに高く上げ
       野良猫の頭上にかざす
       野良猫は
       それでも知らん顔をする
       野良猫は知っているのだ
       頑固爺さんが振り上げた右手で
       決して自分に振り下ろさないことを
       頑固爺さんがそうやって
       強がって見せているだけだということを
       よく知っているのだ
       
       次の日
       頑固じいさんに会ったので
       こんにちは
       と挨拶をすると
       頑固爺さんは怖い顔のまま
       聞こえない振りをした
       野良猫にそっくりだな
       くすっと笑うと
       頑固爺さんは
       あの怖い顔でぼくを睨んだ
       こんにちは
       ぼくはさっきよりも
       大きな声で挨拶をしても
       頑固じいさんは返事もしない
       そのとき僕は思った
       頑固爺さんが
       野良猫に向かって振り上げた手の分だけ
       ぼくは頑固爺さんに挨拶しようと
       そのときがやって来たら
       きっと
       頑固じいさんは
       怖い顔もせず
       こんにちは
       と言い返してくれるだろうと
       
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by dreaming_star | 2004-05-30 21:21 |
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