詩 『 風呂敷 』

       六畳間に
       広げた風呂敷
       鞄に入らないものを
       この風呂敷に包もうとする
       六畳間に
       広げた風呂敷
       藍染め絞りの
       この風呂敷に包もうとする
       霧の箪笥にしまわれ
       もう何年も袖を通さない友禅
       正月に母が作る
       おせち料理のお重箱
       祖母が買ってくれた
       螺鈿の蝶の細工のアンティークランプ
       仮面と絹糸刺繍の衣装を身に纏う
       贈り物のアンティークドール
       「あなたの好きなものを包みなさい。」
       そう言ってあなたが買ってくれたのに
       みんなのよろこぶ顔が見たいから
       みんなを悲しませたくないから
       僕はそれを風呂敷に包もうとする
       でも
       包もうとする度
       風呂敷の底は抜け
       大きさは十分あるのに
       端が届かず結べない
       ポケットから
       ひと粒の小さな種を取り出し
       風呂敷に包んでみる
       上手く一つ結び包みが出来て
       ほっとする
       すると今度は
       風呂敷包みを開けるときが
       待ち遠しくなる
       この小さな種が花を咲かせるには
       まだまだ時間はかかるけれど
       いつかきっと
       大きな花を咲かせてくれるだろう
       小さなよろこびの種が
       大きな笑顔の花を咲かせるとき
       そのときが
       風呂敷包みを開けるとき    
       
[PR]
by dreaming_star | 2004-05-06 23:46 |
<< のらねこ物語8 『 いらっしゃ... 雲の鳥 >>