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詩 『 兄さん 』

       兄さんが着てる青色のチョッキ
       兄さんが持ってる機関車のおもちゃ
       兄さんが話すちょっとおませな言葉
       兄さんがよくする髪を掻き揚げるしぐさ
       僕は兄さんが大好きだから
       いつも兄さんの後をついて廻り
       僕には兄さんが一番だから
       いつも兄さんの真似をした
       
       兄さんはだんだん大人になり
       後をついてく僕がうっとうしくなった
       兄さんは僕をだんだん避けるようになった
       兄さんに喜んでもらおうと
       兄さんの好きなものを探した
       兄さんに嫌われないように
       道端で花や四葉のクローバーをプレゼントした
       兄さんはちっともうれしそうじゃなかった
       兄さんはぜんぜん喜んでくれなかった
       僕は悲しくなった
       兄さんが違う人に見えた
       
       兄さんとけんかした
       ちっちゃなことでけんかした
       怒りに任せはぶてた僕は
       兄さんが一番大切にしていたそろばんをぶん投げた
       そろばんの玉が全部飛び散った
       兄さんの大切なそろばんがバラバラになった
       兄さんは泣いた
       僕を怒鳴りもぶん殴ろうともせずに
       そろばんの玉を拾い集めながら泣いていた
       
       僕は兄さんにごめんねと言おうとした
       でも言葉が出てこなかった
       「悪いのは兄さんなんだよ、兄さんが全部悪いんだよ。」
       そう言っても兄さんは僕の方を見ようともせず
       兄さんは泣きながら
       壊れたそろばんを元通りにしようとしていた
       僕も泣いていた
       兄さんに泣いてるのを見られまいと庭へ駆け出した
       
       台所のテーブルの上に
       兄さんのそろばんが置いてあった
       枠の中にきれいに並べられた玉は
       そろばんの形をしていたが
       壊れたままだった
       僕はボンドでそろばんの枠をくっつけ
       へんてこりんな形をしたそろばんを持って
       兄さんの部屋に行った
       
       兄さんは二段ベッドの下で寝ていた
       涙の跡がほっぺたについていた
       僕は兄さんの枕元に
       へんてこりんなそろばんと手紙を置いた
       
       
        兄さんへ
       
          ごめんね、兄さん       
       
          兄さんの大切なそろばんを
          壊しちゃってごめんね
       
          僕は兄さんが大好きだから
          兄さんの気を惹こうとして
          兄さんの大切なそろばんを捕ろうとしたんだ
          でも兄さんは全然振り向いてくれなかった
          だから壊しちゃったんだ
       
          壊れたそろばんは元に戻らないけれど
          僕は兄さんが今でも大好きだから
          仲直りしてください
          僕はどうしようもない弟だけど
          これからも仲良くしてください
       
       
by dreaming_star | 2004-04-21 23:24 | 詩の目次1-100
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