あのとき ぼくは 小学一、二年生だった あのとき ぼくは 友人とふたり下校していた あれは 秋の風が吹き始めた頃だった 一点の曇りもない空 手を伸ばしても届かない空が 高く、遠くに感じられた 秋晴れの日のことだった ぼくらは 傾く夕日を背に浴びて いつもの帰り道を歩いていた 川沿いの一本道を 家に向かいながらも 遠回りすることばかり考えていた ぼくらは 家に続く一本道の途中 道端に咲く花を見つけては その花に触れ 「この花の色は きみの髪に似合うだろうから、冠にしよう」 「この小さな花は きみの細指にぴったりだから、指輪にしよう」 そんなことを言って すらりと伸びた黒い巨人を笑わせ、躍らせて ぼくらは下校中の そのときを楽しんでいた それからのことである ふいに友人が言った 「目を瞑ると、何にも見えなくなる。 何にも見えなくなったとき、 人は、歩くことに躊躇を感じる。 でも、ぼくらふたりの力を合わせれば 躊躇わずに歩くことが出来る。 ねぇ、その実験をしてみようよ。」 学校の授業で 先生がそんなことを言っていたのかも知れない テレビの影響を受けて 友人はそう言ったのかも知れない ぼくにはその理由が分からなかったけれど そんなことを言う友人の提案に 好奇心旺盛だったそのころのぼくは 「うん、いいよ」と 間髪入れずに答えていた それから ぼくと友人、ふたりは どちらかが目を瞑り 目を瞑らない、もう一人が手を取り ぼくらふたりで いつもの学校からの帰り道 歩いて帰ることにした 最初は順調だった 目を瞑ったぼくは 友人に手を引かれ おぼつかない足取りをしながらも 歩を進めることが出来た ゆっくり ゆっくりと 導いてくれる友人の手が じわりと 汗ばんでいくのを感じながら 目を瞑ったぼくは 一歩ずつ、 確かめながら 進んでゆくことが出来た そのぼくに 突然嵐が吹き荒れた 「ぼくは何だって出来る」 「自分ひとりで何だって出来る」 反抗期は まだずっと先のことだ そのとき ぼくは ちょっと得意げな 顔をしてみたくなったのだと思う ぼくは 無防備にも 友人の手を解き ひとりで 歩こうとしたのだった それから ぼくは 数歩も歩かぬうちに 川に落ちた それからは ぼくの記憶には 一切残っていないのだが 友人や母親の話では ぼくは川に落ちた後 その川の近所に住む人に助け出され 親切にも風呂に入れてもらい、服を借りて 迎えに来た母親に連れて帰られたらしい あの川の側を歩くたび ぼくは当分の間 うつむいて歩いていた その川の側を歩いても うつむかなかくなった頃 母親がこんなことがあったわね、と 少し意地悪な顔をして ぼくを見る ほろ苦い あのときの記憶が蘇る
by dreaming_star
| 2004-12-04 21:21
| 詩
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