詩 『 さようなら 』

       きみは行ってしまった
       遠くへ行ってしまった
       さようならの一言もなく
       ぼくを置き去りにして
       きみは遠くへ行ってしまった
       
       きみは戻って来ない
       もうここへは戻って来ない
       さようならの一言が言いたくて
       どこにも居ないはずのきみを
       きみの名を呼びながら探して回る
       
       きみにああしてやれば良かった
       こう声をかけてやれば良かった
       きみと最後に会ったあの日には
       夜の帳が降りるまで
       いっしょにいてやれば良かったと
       悔やんでも悔やみきれない思いを抱え
       ぼくはきみが歩いて来た道を
       きみの影を求めて探し歩く
       
       そんなぼくを見かねてか
       親切に教えてくれる人が言う
         「ここ数日、あの子を見かけなくなりました
          誰か猫好きな方に貰われていったんじゃないかしらね。」
       ぼくは息絶え絶えに答える
         「やはりそうでしたか。
          どこを探しても居ないので、そうだとは思っていたのですが。」
       
       重い沈黙の時が流れ
       もう交わす言葉がないと知るぼくは
       頭を下げてその場を立ち去る
       
       さようなら
       
       ぼくが
       空に向ってそうつぶやくと
       風が吹き
       くるりくるりと
       名残惜しそうに
       落葉は舞う
詩集 さようなら
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by dreaming_star | 2004-11-20 21:46 |
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