「 何だ、これ? 」


 ある日、僕は散歩に出かけた。その途中、とても奇妙なものを見つけた。至る所でいろいろなものを拾うのが好きな僕は、すぐさまその変なものの側に駆けつけた。

 ある程度至近距離まで来ると、その奇妙なもののは、おどろおどろした妖気を漂わせているような、空恐ろしいものがそこにあるような、そんな雰囲気に包まれてその奇妙なものが僕の目の前に転がっていた。

 「うわぁ、何だこれ?」

 遠目では白いものとだけしか分からない。おっかなびっくり、じわりじわり、僕は今にも逃げ出せる態勢で近づき、その白いものと2、3分睨みあいをした。いや、それよりももっと短かったかも知れない。無言の睨み合いというものは、とかく長く感じるものであって、実際には、ほんの10秒ほどしか経っていなかっただろう。

 白いものの正体は、白骨化した動物の上顎だか下顎だかであった。歯がずらりと生え揃い、彎曲していることから、ようやくそれが顎だということが分かり、動物の骨であることを識別することが出来た。人骨を見る機会がなければ、動物の骨と人骨との違いさえ分からず、今も恐怖に慄いていたかと思うとぞっとするが、人骨を見る機会などもうやって来て欲しくはない。

 動物の骨でも骨は骨、怖いものには代わりない。僕はその骨の横をそそくさと通り抜けた。「何を殺生な。」とお思いの方もいらっしゃるだろうが、「成仏してくれよ。」などと骨に向かって手を合わせようものなら、動物魂は、たちまち僕にくっつき背後霊になり、引き離そうとしてもそう簡単には離れず、終生この背後霊を背負っていかなければならない。無縁仏はかわいそうだけれど、そんなことはご簡便!、と僕は無心、無言でその場を走り去った。

 帰り道、またあの無縁仏の道を通らなければならなかった。遠回りしても良かったのだが、日も暮れかかり、寒くなり出したので、僕はしぶしぶあの道を通ることにした。

 「うわぁ、白骨が動いてる。」

 来た時は、上顎だか下顎だか分からなかった骨が、今度はしっかりと元あった目をこちらに向けていた。少し凄みをきかせて睨んでいるようにも見える。きっと烏がいたずらをして動いたのだろう。

 「これは上顎だったんだ。」

 上顎だったと分かったからといって、浮かれ気分になるはずもなく、僕はただその上顎の前で微動することも出来ず、帰り道を立ちふさがれた状態になった。どうすればいいかかと考えてみても、いい知恵は浮かぶはずもなく、ただ暮れていく夕日を見つめ、冷たくなり始めた手をポケットに突っ込んだ。

 カチリ。手に何か当たった。

 「何だ、これ?」

 ポケットからそれを取り出して見ると、祖母の形見の入れ歯だった。なんでこんなものがポケットに入っているんだ、と不思議に思いながらも、その白骨に向かって祖母の形見の入れ歯を投げた。すると、動物の上顎の下にカポッとはまった。少し噛み合せが悪いようだが、白骨は喜んでいるようで、カチカチと音を立て始めた。そして、林の奥に消えて行った。

 これで一安心、さぁ、帰ろうか。と思いきや、そうだ、祖母の形見、大事な入れ歯があの白骨に持って行かれてしまった。後を追う勇気もなく、僕はしぶしぶ帰途に着いた。

 意気揚々などとは言えないけれど、白骨退治出来たことに少し安堵している矢先、ボテッ。

 「痛ッ。」

 空から蜜柑が降ってきて、僕の頭に見事命中したのだ。空を見上げると、烏が飛んでいた。一羽やニ羽ではなく、十数羽の烏が空を埋め尽くす黒い雲のようにワサワサと飛んでいた。その一羽が僕を目掛けて蜜柑を降らせて来たのだ。それを合図に他の烏も僕を目がけて蜜柑の雨を降らせてきた。

 「烏め、覚えてろよ。」

 烏たちの蜜柑攻撃の合間をすり抜け、ようやく家に辿り着いた。蜜柑まみれの僕はもうへとへとになりながらも、祖母の仏前に線香を供え、鈴を鳴らし合掌すると、

 「今日は随分と楽しんだようだね。」

 祖母の声がしたような気がした。入れ歯は大丈夫だったんだ、と安堵しながらも、

 「今日は散々でしたよ。」

 と、祖母に報告したのだった。

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上の話は以前僕が書いた日記であるが、この話には続きがあったのだ。

先日、TVを見ていると、「死体遺棄事件」ニュースをしていた。

詳細は下記の通り

●発生日時:平成15年12月頃~平成16年1月30日までの間
●事件概要:1月30日、「○○村」において、頭蓋骨などの人骨が発見された。
      現在のところ身元は判明していない
●特徴及び推定事項
  ・年齢等:30~50歳くらいの男性
  ・血液型:A型
  ・その他:死後1~2ヶ月
       前歯に隙間 など

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もしかすると、この白骨は僕の見た骨に関係があるのではないか
と少し思いはしたが、でもあれは動物の骨だったはず。
違うのは分かっているけどやはり気になって仕方がなくなり、
僕は、またあの薄気味の悪い骨のあった場所に行って見た。

しかし、骨はどこにも見当たらなかった。

果たして骨は一体どこへ消えたのか、
はたまたあれが事件の白骨なのか・・・。
謎は解明の糸口も掴めず迷宮入りとなってしまった。

僕の見た骨は一体何の骨だったのだろう。
不安が僕の心を今も過っている。
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by dreaming_star | 2004-02-10 20:36 | 日記
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