詩 『 何も 』

       人は産声を上げるとき
       何も持っては生まれない
       魂も肢体も無垢な精神も
       全て神から授かりしもので
       自らの手で生み出したものではない
       記憶のノートの書き出しは賛美歌
       夢と希望、愛情を
       手にした喜びに溢れている
       だが人は
       成長するにつれ
       それを忘れる
       親の庇護のもと
       ぬくぬくと暮らすうち
       与えられたものは全て
       自分のものであるかような感覚に捕らわれる
       庭先に咲いた花を
       誰かに差し出さなければならないとき
       その花は奪われるのではない
       元々誰のものでもない花なのだから
       花が摘み取られてもいいよと言えば
       快く差し出さなければいけない
       自分が手にしているもの全ては
       元々は与えられたものであり
       奪ったものである
       奪ったものは他人に返す
       産声を上げたときのように
       何も持たない方がいいに決まっている
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by dreaming_star | 2004-10-12 00:00 |
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